北斗星(6月13日付)

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 国のトップ同士が初顔合わせでいきなり重要な物事を決めるというのは、そうそうない。決裂した場合のリスクがあまりにも大きいからだ

▼2002年に当時の首相小泉純一郎氏が北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記(故人)と初対面した日朝首脳会談はまさにぶっつけ本番だった。水面下の交渉があったとはいえ、拉致被害者が生存しているかどうかは行ってみなければ分からなかったという。ぎりぎりの判断を迫られただろう

▼日帰りで、滞在時間は限られていた。ところが会談はなかなか進展しない。日本から持参したおにぎりを休憩中に食べようとしたが、口にする気力も出てこなかった。小泉氏は著書「決断のとき」(集英社新書)でそう振り返っている

▼シンガポールできのう、史上初の米朝首脳会談が行われた。少し前まで激しくののしり合っていたトランプ米大統領と金正恩(ジョンウン)朝鮮労働党委員長が何度も握手を交わした。日朝会談と違い、和やかにランチも共にした

▼協議は決裂することなく、共同声明の署名にもこぎ着けた。ただ懸案である「非核化」は玉虫色。いつまで、どのように実現するのかなど具体的な道筋は示されなかった。これまで何度も約束をほごにされているだけに懸念が募る

▼日朝会談では、金総書記が拉致を認めて謝罪。拉致被害者5人が帰国したものの、その後交渉は頓挫した。だが今回の米朝会談で拉致問題は提起された。一日も早い解決に向けて、日本外交の総力を挙げるべきときである。