社説:地上イージス調査 候補地なぜ明示しない

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 小野寺五典防衛相は衆院予算委員会で、秋田市と山口県萩市が候補地に挙がっている地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(地上イージス)を巡り、配備の前段となる調査候補地決定について「地元首長の理解と協力が必須だ」と述べた。また「地元の理解を得る努力をすることが大事。調査の時期になれば事前に関係自治体に説明する」とした。

 だが、候補地の具体名については言及を避けた。予算成立後に地元に理解を求める方針を示したが、候補地に挙がっている地元住民は日々不安を募らせている。そうした現状を小野寺氏はどう考えているのか。候補地自治体の具体名が上がる中、従来通りのプロセスで進めようとする姿勢は不誠実と言わざるを得ない。予算成立前に調査候補地の地元に丁寧に説明することを政府に強く求めたい。

 小野寺氏は答弁で、候補地決定に当たって「地元の理解を得る努力をしたい」など「努力する」という言葉を繰り返した。地上イージス関連の調査費などが2018年度予算案に盛り込まれているが、こうした答弁では調査や配備に対する地元の不安を増幅させるだけではないか。「地元の理解を得る」ことが大前提であることをしっかりと約束してもらいたい。言うまでもなく、地元首長への説明にとどまらず、住民向けの説明会を開くなどして正確な情報を早期に示すことが重要だ。

 「努力」発言は、名護市辺野古への米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設を沖縄県の反対を顧みず強引に推し進める安倍政権の外交・防衛政策を想起させる。安倍晋三首相は沖縄の基地負担軽減の「努力」を誓うが現実はどうか。現在も在日米軍専用施設の7割が沖縄に集中しており、負担軽減には程遠い。

 移設問題が争点となった先の名護市長選では容認派の新人が反対派の現職を破った。だが、地元紙の出口調査では移設反対が64・6%に上っている。地域経済の疲弊を実感する市民の多くが、止まっている国の米軍再編交付金の再開を期待して新人に投票したとみられる。移設問題での政府の対応を目の当たりにしているだけに、小野寺氏の「努力する」発言を懐疑的に捉える秋田県民は多いだろう。

 そもそも地上イージスの必要性や有効性が判然としない。さらに、地上イージスに地対地ミサイルを装備すれば、敵基地攻撃が可能となり、日本の基本方針である専守防衛を逸脱する恐れが指摘されている。国民の疑問や不安に対し、安倍政権は今国会で丁寧に説明することが必要だ。

 候補地としてクローズアップされた後、秋田市では市民レベルで勉強会が開かれた。こうした取り組みが広がることを期待したい。県、秋田市も事案の重大性を受け止め、住民任せにせず、先頭に立ってこの問題に対処すべきだ。